#

日中友好協会(日本中国友好協会)

日本中国友好協会
〒111-0053
東京都台東区浅草橋
5丁目2-3鈴和ビル5階
Tel :03(5839)2140
Fax:03(5839)2141

HOME > 日中友好新聞 > 2016年3月5日号

日中友好新聞

中国の環境問題を考える(1)
深刻な大気汚染 現状と対策
周 建中


 

shinbun

ひどい北京の大気汚染(2015年12月8日)出典=中国新聞社   



 ひどい大気汚染などが各地に広がっている中国の深刻な環境問題。その現状、問題点、対策などについて、この分野の専門家の周建中さん(東京成徳大学教授)に4回連載で解説をお願いしました。次回からは3面(月1回)で紹介します。                          (編集部)


1年の1/3がスモッグ

パネルディスカッションu
図1 2013年1月7~13日スモッグ発生日数分布図、中国中央気象台、Baidu.               
 こ30数年来、中国は経済急成長とともに、大気の汚染も蓄積されてきた。近年、特に2013年冬季、北京・天津、上海、広州・深という三つの最も人口・産業が密集するエリアと周辺地域には、スモッグの発生日数が年間日数の1/3、半分を超える地区もあった。
 また、広範囲にも発生し、例えば13年1月29日には国土面積の約7%を占める130万平方㌔の地域にスモッグが発生し、8億以上の人口に影響を及ぼした。大気汚染は最も深刻な環境問題となっている。

 図1で示されるように特に人口と産業が集中する南東部に多く発生する。


石炭依存のエネルギー

 原因としては、GDP増重視と急速な経済発展、多い人口の暖房と火力発電による石炭利用増、自動車・産業などによる排気ガスの急増。例えば13年、中国における新車販売量は2199万台で、日米両国の合計よりも多かった。
 非合理的産業構造とエネルギー構造だけでなく、環境対策と監視・管理の不足、違法汚染物質排出行為への法令の不備と執行不足および、環境保全意識が希薄だったことも深刻な大気汚染の要因だと言われる。
 さらに、異常気象による要因もある。例えば、15年12月、北京、天津などに発生した深刻なスモッグは、現在も続く強いエルニーニョ現象が要因の一つだと指摘される。
 中国にAQI(Air Quality Index)という大気汚染指数(Ⅰ級の緑色は優、Ⅱ級の黄色は良、Ⅲ級のオレンジ色は軽度汚染、Ⅳ級の赤色は中度汚染、Ⅴ級の紫色は重度汚染、Ⅵ級の赤褐色は厳重汚染の6等級)があり、警報発令にも使われてきた。また、PM2・5濃度の指数を加えて16年度から全国で施行することになった。


天然ガスなど利用へ

 汚染物質放出の多い石炭の生産量と使用量の削減、鉄鋼など過剰生産能力の解消、大都市周辺大型石炭発電所の閉鎖、天然ガスなどの開発利用の拡大、内蒙古など石炭資源豊富な北西内陸の電力を東部地域への長距離送電および、水力・太陽光・風力発電などクリーンエネルギーと原子力発電事業の発展に大いに力を入れ、暖房用と発電用燃料種類構成の転換等大気汚染防止対策と予算の増加の対策もとってきた。13年度都市部燃料用ガスへの設備投資額は09年の177%まで増えた。



目標達成に15~20年も

 17年までに、全国の地区クラス以上の都市の粒子状物質濃度を12年比10%以上削減し、大気の質が「優良」な日数を年々増加させ、北京・天津・河北地区、上海など長江デルタ地帯、広東省の珠江デルタ地帯などの地域のPM2・5濃度をそれぞれ25%、20%、15%程度削減し、北京市のPM2・5の年平均濃度を    程度にし、今後5年以内に全国の大気の質の全体的改善を目標としている。
 14年11月、北京APEC(アジア太平洋経済協力会議)期間中の、北京に青空が戻った「APECブルー」は可能性を示したと思われる。
 14年、北京のPM2・5濃度は13年より4%減少した(年度目標は5%)。15年、北京は13年より10%、天津市は27・1%、上海は14・5%、広東省は25・5%それぞれ減少して目標は達成したが、汚染はなお深刻であり、最終目標を達成するには、まだ15~20年はかかると言われる。






[一覧に戻る]

#