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日中友好新聞

2010年3月25日号1面
「満州国」から国家の正体を問う
青年劇場「太陽と月」の作・演出
ジェームス三木さん

 果たして「満州帝国」は存在したのか、まぼろしの国家だったのか―。
 青年劇場は4月16日から25日まで、東京・新宿駅東口の紀伊國屋ホールでジェームス三木作・演出の「太陽と月」を上演します。移民の子として満州で生まれ、幼少期を過ごしたジェームス三木さんは「今になって建国の理念や、法律の矛盾に関心をもち、満州国の正体を突き止めたいと思った。脚本を執筆中、日本に駐留する米軍が、関東軍と重なって見えた」と言います。(取材・文=福田和男)

 

日本人は満州国籍取らず

写真1

 

 満鉄理事の当主、関東軍将校の長男、「満州国」官僚の婚約者。新国家の輝ける未来とともに2人の幸せを願う一家に、突然悲劇が襲う―。
 日本のかいらい国家「満州国」が、まさに「偽満」だったことを告発する物語です。悲劇と引き換えに「満州国」の本質を知ることになる長女。婚約者とのこんなやりとりもあります。
 
 長女 「不思議なのは、満州に住む日本人の国籍です。五族協和の国家なら、すべての民族が、満州国籍を取得して、満州人になるべきじゃありませんか?」
 婚約者 「はっきりいえば、在留邦人は満州人になりたくないのです。日本人のまま満州にいたいのです」
 長女 「ずいぶんムシのいい話ですね。満州人にはならずに、満州を支配したい」
 婚約者 「日本の人口を減らしたくないのが本音でしょう」
 長女 「それじゃ、やっぱり日本の植民地じゃありませんか。満州人が新国家を、信用するはずがありません」
 
 五族協和の王道楽土にあこがれ、新天地満州に移民した日本人は200万人近くに達しましたが、ほとんどは満州国籍をもたず、日本人のままでした。関東軍も満州国軍には入らず、あくまで天皇の軍隊でした。三木さんは言います。
 「満州国をつくろうという日本人が、誰も満州の国籍を取ろうとしない、満州に行った日本人は、満州人になるのを嫌がったからじゃないでしょうか。満州国は、結局、国際連盟も承認せず、多くの矛盾を抱えたまま、13年で消滅しましたが、(満州国は)現実にはどうだったのか、あったのか、なかったのかを考えながら、今回の作品を書きました」

 

国家のふりをする権力に注意

 

写真2
「太陽と月」の稽古風景

 「太陽と月」は「満州国」つまり、「国家」とは何かを問いかけるものです。
 「戦争は国が起こすのではなく、時の政府が起こすものです。政府が国家のふりをすることに、私たちは気をつけなくてはいけません。それと、満州国の当時の状況と、米軍基地がある今の日本の状況は似ています。満州国の国旗(黄色を基本に、左上に赤、青、白、黒の太い線を入れ、五族協和を表した)もアメリカの国旗に似てるんです」
 三木さん自身、奉天(現在の瀋陽)で生まれ、小学5年生まで過ごしました。祖父、父とも、「満州」で皇民教育を推進する教師。三木さんも日本人だけの学校に通っていたため、日本人が威張るのは当たり前と思っていた、と言います。
 「あなたの出身地はどこ?と聞かれると困るんですよね。つい、満州って言ってしまいますが、今はない。中国では今、『偽満』という。私は偽満にいたわけですよ。日本は戦後、満州国のありかたとか、(満州国)協和会のこととか、いろいろとあいまいにして、きちんと教えていない。五族協和というけれど、当時、朝鮮人は日本人だったはずですよ。矛盾と分からないことだらけです」

 

友好は文化交流で

 

写真3

「宇宙全体より広くて深いもの
 それはひとりの人間のこころ」
と色紙にサイン

 今年は韓国併合100年、日米安保条約締結50年など、さまざまな節目の年に当たりますが、とくに中国、韓国、北朝鮮など近隣諸国とどう友好関係を築くかが日本の課題となっています。
 「相手の身になることです。北朝鮮もそうです。日本とアメリカが戦争をしていたとき、北朝鮮の人は日本の軍隊に入って戦っていました。そのことを北朝鮮の人はよく覚えているが、日本人はすっかり忘れています。このことからも、一方的にモノを見ることは危険で、相対的に見るべきです。国家がある限り、政治、経済、軍事、外交など、ほとんどは対立しますが、唯一対立しないのは文化です。宗教、儒教、漢字…日本の文化のほとんどは中国の影響を受けています。中国の小説を読んだり、映画を見たりすることで、中国人も私たちと同じように恋愛し、結婚し、子育てをしていることを知るわけですから。文化交流は世界的に重要です」
 三木さんは、「マスコミ9条の会」の発足呼びかけ人の1人です。最後に、憲法への考えを聞きました。
 「憲法は、国家はこういうことをしてはいけませんよと、国家権力の暴走をしばる縄のようなものです。国民のみんなが憲法を変えようというのなら分かりますが、政治家が、国家権力が憲法を変えようというのは危険なことです。戦時中は、よく非国民という言葉が使われましたよね。立ち上がれないほど、人格を否定するような言い方で。昔は天皇が国家でしたが、今は国家のふりをする政治家や政府に気をつけなければいけません」

 

青年劇場第101回公演「太陽と月」
(作・演出 ジェームス三木)


■日程:4月16日(金)〜25日(日)
■会場:紀伊國屋ホール(新宿駅東口、紀伊國屋書店新宿本店4F)
■問い合わせ:青年劇場 TEL:03−3352−6922
■料金:一般=5000円、U30=3000円(消費税含)、当日=各300円増(消費税含)
※全席指定

 

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