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公式見解

田母神前空幕長発言に厳正な対処を

 田母神俊雄航空幕僚長が、侵略と植民地支配を正当化し、「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」と主張する論文を発表し、更迭されました。この問題は、歴史の真実と平和を希求する国際社会に対する重大な挑戦であり、田母神氏個人の責任で終わるものではありません。
 植民地支配によって民族固有の文化を奪い、中国をはじめとしたアジア諸国に攻め込んで2000万人をこえる人々を殺した侵略戦争の事実は、けっして否定できるものではありません。「三光作戦」、731細菌戦部隊、「従軍慰安婦」をはじめとした日本軍の加害の実態は、被害者のみならず、自らが加害行為をはたらいた元日本兵の証言でも明らかにされています。この動かしがたい事実を「濡れ衣」などと否定することは、到底許されるものではありません。
 今回の田母神航空幕僚長の問題は、侵略戦争に対する明確な反省のないままに、旧日本軍の体質を引き継いだ自衛隊の本質を露呈したものであり、その体質のままに、航空自衛隊のトップである田母神氏が同論文で集団的自衛権の行使や攻撃的兵器の保有解禁をも主張したことには、戦慄を禁じ得ません。
 さらに、田母神氏が最優秀賞を受賞した「『真の近現代史観』懸賞論文」には、田母神氏以外に、応募者の3分の1以上にあたる94名の現役航空自衛官が応募していたことが明らかとなっています。航空幕僚長をはじめとした多数の現役自衛官の行動は、戦前に軍部の勝手気ままを許したことが重大な結果を招いた事実を想起させるものであり、看過することはできません。
 田母神氏は更迭後の記者会見においても、あらためて「日本は決して侵略国家ではない」との持論を述べ、「政府見解は検証されるべきだ」と主張しました。このような人物を任命した当時の安倍首相の責任はもとより、田母神氏を、懲戒処分とせず、定年退職とした政府のあいまいな姿勢は、数々の戦後補償裁判で謝罪と賠償を認めない日本政府の主張にもみられるように、侵略戦争の責任に背を向けてきた「戦犯政治」にその根元があると言わざるをえません。
 日本中国友好協会は、平和と民主主義を守り、アジアと世界の平和に貢献することを願う立場から、日本政府は自らの責任を明らかにするとともに、今回の問題を田母神氏の更迭に終わらせることなく、自衛隊が引き継いでいる旧日本軍の思想と体質の一掃と、侵略と植民地支配の反省を明確にした歴史認識の徹底をはかり、再び戦争の道に踏み出さないために力を尽くすことを強く求めるものです。

 

2008年11月11日

日本中国友好協会(会長 長尾光之)


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