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HOME > 日中友好新聞 > 2018年1月5日号

日中友好新聞

笑いでつなぐ日本と中国の輪
又吉直樹、中国に行く


shinbun
又吉直樹=お笑いタレント、小説家。お笑いコンビ・ピースのボケ担当。第153回芥川龍之介賞受賞
作家。大阪府寝屋川市出身。株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。1980年生まれ。



 2017年6月、又吉直樹さんは芥川賞受賞作『火花』の中国語版の出版で初めて中国へ。訪問先の上海で「90后(ジュウリンホウ)」と呼ばれる1990年以降に生まれた若者たちと対話しました。作品「火花」を通して中国の若者とどのような交流をしたのでしょうか?また、中国に対してどのような思いに至ったのかなど、お話を伺いました。(聞き手=石子順)



訪中のきっかけは?

 『火花』が中国語に翻訳されたんで、その出版記念に中国で学生さんとお話できる機会がありますけど、どうですかーみたいなことで。
 僕が中国に行きたかったのも中国のことが知りたいということもあったんですけど、中国は子どものころから知っている国ですし、中国に限らず、どこでも行ってみたいんですけど、行ける機会があるなら中国にやっぱり行ってみたいって。文化的な面でもすごく惹(ひ)かれる部分がありますし、単純に歴史のある国なんで見てみたい。どういう風景なのかなーって、好奇心もありました。

初めて行かれてどうでしたか?どんな感じでしたか?

 面白かったです。ご飯もおいしかったですし。お笑いとか中国にもそういう芸人みたいな人がいるっていうことでしたけど、通訳してもらいながら僕が日常感じてる普通のことをいつもよりゆっくりしゃべりましたけれど結構みんな笑ってくれました。
 上海を歩いて古い街が残っている部分と開発されて大きいビルが建っているところに行きました。古い街並みの建物の前に椅子に座っているおばあさんがおって、自分の地元とか通じる部分もあって懐かしいなって感じで。

書店での交流は?

 書店に行くといわれて、おそらく7~8人来て下さっているのかなって。もしかして現地の仕事をしている日本の方とか、もともと僕のことを知っている人が来てくれているのかなって思ったら、100人近くの若い人たちが椅子に座っていて、みんな中国の人たちで、僕のことを知っていてくれて、とても不思議な感じがしましたねー。30分か40分くらい1人でずっとしゃべっていたんです。


喜んだでしょうね、中国の人たちは。

 そうですね。すごく話しやすかったですし、真剣に聞いてくれているなーって、僕が、もちろん言葉がちゃんと分からへん環境でやっていることも理解されているんで、真ん中あたりに座っている男の子がずっと僕の眼を見て、うなずきながら、なんか僕がしゃべる度に笑ってくれて、しゃべりやすくしてくれているのだなと、やさしくしてくれているんだなって感じました。
 そういう意味では、僕は一緒やなって、近いなって、なにか同じ作品に向き合った時と同じで、お互いが同じものを鑑賞し合った時に、分かり合える部分っていう感じがしました。当たり前なんですけど、国とか関係ないなって思いましたね。
 質問もちゃんと『火花』を読んでくれている人やなーって分かりますし、みんなで読んで、それについてしゃべっているということは同方向を見ているから、そこに共通するものが出てくる。
 一番分かったことは、一緒やなーっていう、歴史的なことがいろいろあると思うんですけど、同じようなことで喜べるし、同じようなことで、それぞれ思う。共通するものがあるから、違いを探しに行ったというより、共通している部分があるなって確認できたかなって感じですね。

強く感じたことは?

shinbun
「中国で公演したいですね」-と又吉さん

 僕は、政治家でもないですし、ただお笑い芸人で小説も書いていて、表現にたずさわっている人間なんで、自分の作品を読んでくれた読者とか、自分の原作の何かを見てくれた人に対して、どういう反応を示してくれるのかすごく伝わってくるんです。
 それが伝わって僕が感じたことは、自分の表現というものがまずあって、それを鑑賞してくれる方がいたときに、すごく距離を近く感じることができる。そういう普遍的なものっていうのは、たぶん絶対あると思うのですね。
 僕は例えば、中国の映画とか文学とかを今後、読んでいく中でも、やっぱ面白いなって思う芸術作品、表現というものに見た人間の性格とか生活とか、愛であったりとか、家族を思ったりする気持ちとかは間違いなく共通するので、そういう部分を信じていきたいなーっていうのが、僕としては一番強い感じですね。

中国体験をされて、いまの日本と中国の関係で感じられていることは?

 学生さんと直接接してみたり中国のご飯を食べさせてもらったり、僕の小説に共感してくれたり、同じ部分がすごく多いなと。僕自身も中国の作家の小説とか中国の映画を見て感覚の確認作業というか、やっぱ同じやなーって思うことがしたい。
 学生時代など学校のクラスメイトとかよく分からん奴があったりしたけど、共通の話題とか共通なものに対する反応で一緒やなって確認できると、すごく距離が縮まることがあった。それと同じようですね。中国ってやっぱりよかったですね。また行きたいですね。

『火花』は文庫版になり合わせて300万部売れたそうですが?

 まさか、そんなに多くの人に読んでもらえるとは思っていなかったですけど、僕の場合は自己満足で書いている訳でもないので、面白い小説を書いて、みんなに楽しんでもらえたらいいなって思ったんで、すごく嬉しいことだなと思っていますね。

テレビドラマ化や映画化されたことは?

 2時間という映画の基本的な制約があるんですけど、それを全然感じさせないというか、ちゃんと僕が書いた『火花』の世界みたいなものを、さらに広げて下さっているなって感じです。
 映画「火花」(昨年11月23日公開)の中に流れている時間の中で、どんどん補強というか絵の強さで、僕のお笑いの大先輩の板尾創路(いつじ)さんが監督されて本当にありがたいと思いましたし、すごくいいなって。お笑いの芸人の漫才師を演じるのは難しいことだと思うんですけど、桐谷健太さんも菅田将暉(すだまさき)さんもスクリーンの中では役の人物として見えたんで、すごいなって思いました。
   お笑いの世界で見てきた何気ない日常であっても、ある種、軽んじられる職業なんですけど、その当事者の落ちたり、受かったりが僕としてはすごく愛おしい風景だったので、その中での先輩、後輩っていうある意味で運命共同体として大きな影響を与える瞬間がある。その関係性を自分の世界の風景で見ていたので(映画は)2人の変化を丁寧に描いていました。

                    ◇

 中国語版『火花』(毛丹青訳・人民文学出版社)の前書きで又吉さんは、「新しい読者の皆さんが、この物語をどのように読まれるか、私は大いに期待しています」と書いています。中国の『火花』愛読者や一般の人たちのためにも又吉さんのお笑いを直接みんなに語ってほしいですね。
「機会があれば中国でぜひ、やりたいです」─しっかりした笑顔が返ってきました。



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