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HOME > 日中友好新聞 > 2017年6月5日号

日中友好新聞

遺品の数々目の当たりに
上海の旧日本軍の慰安所
前山加奈子


 

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博物館前の慰安婦″を象徴する「中韓平和の少女像」



 近日来、韓国では日本大使館前に置かれた旧日本軍“慰安婦”を象徴した少女像を撤去する、しないで、物議をかもしています。文在寅(ムン ジェ イン)新大統領は対日課題に挙げました。
 戦後処理の拙(まず)さが、70年余りたってもまだ尾を引いているのは、韓国だけでなく、中国大陸においても未解決のままであることを、多くの人は知っています。しかし、それは海南島や山西省などの奥地の村でのことだと、漠然と思っているのではないでしょうか。



市内に172カ所も

 大都市上海の街中(まちなか)で旧日本軍が慰安所を設置していたことを、改めて知ってほしい。このような思いを抱いて、長年にわたって旧日本軍の“慰安婦”問題を調査・研究している、上海師範大学教授の蘇智良(そ ち りょう)氏を今年3月末に訪ねました。
 蘇教授は同大学で教鞭をとる傍ら、協力者とともに市内の慰安所跡を探し出し、現在では172カ所が判明しているということでした。今回の訪問では、蘇教授が中心になって学内に設立した、中国“慰安婦”歴史博物館(前身は93年3月に発足した中国“慰安婦”問題研究センター)を見学し、調査研究の進展を伺いました。



90年代から調査研究

 中国大陸では90年代初めに“慰安婦”の調査研究が始まり、各地で大量の一次資料が集まり、現在までに調査は、22の省市自治区に及んでいます。そして”慰安婦”制度が実施された歴史的背景や犠牲者の被害の実態等を『慰安婦研究』『日軍性奴隷』『日軍慰安婦制度批判』等にまとめています。
 また最近、吉林省档案(とうあん)館(文書館)は日本軍が残した公文書を、資料集『鉄証如山』3冊にまとめました。日本軍の退却時に焼却し穴に埋めたものが、近年道路開発のために偶然掘り出され、大量の焼け残った日本軍の公文書が白日の下に晒(さら)されたのでした。
 上海の博物館内の展示は日本軍“慰安婦”制度の誕生(1918~36)、制度の実施(1937~41)、制度の拡大(1941~45)、被害者の苦しみ、賠償請求―裁判と罪責の5つに分かれ、日、中、英の3カ国語での冒頭説明があります。被害を受けた地図や女性たちのパネル(現在の生存被害者は19人)、水筒や衣服等の遺品も保存され、DVD資料を見る部屋も用意されています。
 また2000年以来、国際シンポジウムをたびたび開き、日本、韓国、フィリピン、マレーシア、オランダ等から研究者やメディア関係者が参加。2015年9月のシンポには被害者の海南島リー族の卓天妹(たく てん まい)さんと韓国の姜日出(きょうにちしゅつ)さんが出席して、苦難の体験を語りました。
 そして昨年5月には、ソウルでユネスコ世界記憶遺産の登録申請した、「慰安婦の声」へ資料提出も行なっています。


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焼け残った日本軍の公文書






館前に“慰安婦”像2体が

 博物館のある建物の前の緑地に中韓の“慰安婦”の少女像2体(「中韓平和の少女像」)を置いたところ、日本政府の抗議を受けた中国外務省から即刻撤去するように指示されたということでした。
 しかし、蘇教授などの努力によって、少女像は今も変わらず、静かに木陰の下で訪れる人たちを迎えています。この像は、本来ならば、上海市内の慰安所跡に置かれて、戦争による残虐な行為と悲劇を多くの人びとに知らせるべきではないでしょうか。
 事実を知ることを恐れず、真の平和な友好関係を築いていくことこそが大事だと思いました。


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上海師範大学内の「中国“慰安婦”歴史博物館」館長の蘇智良教授(右)と筆者




(駿河台大学名誉教授、中国女性史研究会前代表)





日本政府に歴史直視と反省促す
中国外務省、「慰安婦」問題で
 新華社電によると、中国外務省報道官は4月20日の記者会見で、日本政府が「慰安婦」問題をめぐり、日本軍による「強制連行」を否定し続けていることを批判し、次のように述べました。
 ▽「慰安婦強制連行」は、日本軍国主義による第二次世界大戦中の重大な反人類犯罪行為で、動かぬ証拠が山ほどあり、言い逃れは許されない。日本政府は今日に至っても、この問題をかたくなに否定し、見て見ぬ振りをしており、これでは歴史問題に対する日本の誤った態度が改めて明らかにされるだけである。
 ▽歴史を確実に直視し深く反省して、はじめて歴史的な重荷を真に下ろすことができると強調しなければならない。われわれは、日本が歴史を鑑(かがみ)とし、関係国と国際社会の懸念を重視し、責任ある態度で問題を適切に処理するよう改めて促す。





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