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HOME > 日中友好新聞 > 2016年4月25日号

日中友好新聞

「一人っ子」から「二人っ子」へ
中国の計画出産政策の改正
前山加奈子


 

shinbun

二人っ子政策の相談受付で相談を受ける親子(21世紀経済報道3月9日付)  



新たに出た人口計画政策

 今年1月1日から中国では「二人っ子」政策が正式に実施され1980年以来36年間続いた「一人っ子」から「二人っ子」になった。
 一人っ子政策は、人口の増大が人口の資質と社会主義建設に支障をきたすことを危惧して実施されたが、第二子以降は非合法として戸籍が与えられず、男子を重要視するため女児が間引かれて、アンバランスな出生性比などの問題が続出した。
 そのため、状況に応じて、段階的に条件が緩和されていた。1984年には農村の労働力確保のために、「二人」に緩められ、都市においても「双独二孩(夫婦とも一人っ子だと子ども二人可)」、さらに2013年には「単独二孩(夫婦のどちらかが一人っ子だと子ども二人可)」と変わってきていた。少数民族には、これらの人口計画の開始当初から、制限は加えられていないため、他の優遇策も影響して、人口が増加している。

なぜ「二人っ子」政策を出したか?

 しかし、最新の全国人口調査では、出生率はすでに1・18に下がり、欧米諸国より低い。ちなみに日本の出生率は2014年で1・42である。第12次5カ年計画以降も人口は増加し続けてはいるが、労働人口は減少、逆に60歳以上の人口は増加している。人口構成を健全に保ち、労働力の供給、老齢化に歯止めをかけ、小康社会を打ち立てるためにさらに良い計画出産の国策を打ち出したと説明している。

二人っ子政策後、人口などはどうなるか?

 今回の改正は「全面二孩(どの夫婦も子ども二人可)」で、この条件を満たす夫婦は、中国全土で約9000万組いる。政策実施後の数年間は、出産ブームを招き、経済や社会などに悪影響をもたらすのではないかと懸念する意見があるが、一方で、国家衛生・計画出産委員会は、逆のメリットを予測している。
 つまり、子ども関連の消費(紙おむつ、粉ミルクなど)は新たな消費増加とみなされ、それ以外にも子ども部屋の需要増加で低迷している不動産業界の業績好転や教育関連などの消費増加が見込まれると説明する

人びとの反応は?

 今回の改正で最も恩恵を受けるのは「七〇後」と言われる70年代生まれの夫婦である。次が80年代と90年代であるが、80年以降生まれは基本的に一人っ子であるため、今回の改正以前からすでに「夫婦とも一人っ子の場合は、第二子の出産が可能」とされているため、新たな恩恵はない。
 しかし「七〇後」の多くが、第二子を計画しているわけではないようである。そこには、中間層以下は豊かな生活を維持するために、教育費など高騰し続けている費用をあえて捻出できない状況がある。第二子を産めるのは高収入の夫婦に限られてくる。
 他方、伝統的な「多子多福(男児が多いほど幸せ)」「跡継ぎは男児」という家族観は、特に都市部では変化し、女の子だけでもいい、あるいは女の子の方が好ましい、となってきている。

今後の見通しと課題

 このように変わってきた意識のもとで、二人っ子政策が期待される効果を発揮するかどうかは疑問である。国家衛生・計画出産委員会は「目標に達しなければ、第三の調整、たとえば社会福祉費の調整や第三子の許可奨励を図ることになる」としている。
 一人っ子政策が出された時には、国際世論が「産む自由」と女児の人権がらみで批判したが、今回は大きな反応は見られない。しかし、人為的な政策という枠内で二人に制限することは、国家が出産を管理するという点では基本的に変わらないのである。  (駿河台大学名誉教授)




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