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日中友好新聞

2014年1月25日号1面
ジャイアントパンダに魅せられて
上野動物園で花形の2頭を担当 阿部展子さん

 

 

年輪を重ねて映画女優の輝きを見せる倍賞さん

          

 

上野動物園パンダ舎前の阿部展子さん
プロフィール  1984年、新潟生まれ。杏林大学外国学部、中国四川農業大学卒。成都ジャイアントパンダ繁殖育成研究基地を経て、現在、上野動物園・飼育展示課でパンダの飼育展示を担当。著書に『パンダ飼育係』(角川書店)がある。


 恩賜上野動物園(以下、上野動物園)でジャイアントパンダの飼育を担当している阿部展子さんは幼児のころからパンダのとりこになり、自ら中国に留学までしたその道の専門家です。阿部さんにパンダの魅力、留学生活と成都ジャイアントパンダ繁殖育成研究基地での研修の様子、そして現在の上野動物園での飼育やパンダの保護活動の現状や将来の夢についてお話を聞きました。

 

衝撃的だった初対面

 

 阿部さんを訪ねたのは、昨年11月下旬の昼下がり。小柄ながらも力仕事を物ともせずキビキビと働く姿が印象的でした。
  パンダとの初めての出合いは2、3歳のころ。祖母がくれた小さなパンダのぬいぐるみでした。外見のかわいさに魅了され、肌身離さず持ち歩いていたそうです。
  衝撃的初対面は1995年の春、小学校の修学旅行で上野動物園を訪れた時のこと。「いた――!パンダだ――!お尻しか見えない!本当にあんまり動かないし良く寝る動物なんだ!お尻が茶色い!これが本物のパンダなんだ!」と、感動しきりでした。
  高校3年生の時に見たドキュメント番組が阿部さんに飼育員としての道を開きます。中国四川省の臥龍ジャイアントパンダ保護研究センターで新米飼育員として働く中国人女性を追った番組で「私もこんな人になりたい。中国でパンダを身近に感じられる仕事がしたい」と、決意しました。

 

中国での大学生活

 

杏林大学外国語学科中国語コースに入学し、中国語を猛勉強。在学中に中国の河北大学に約1年間留学しました。中国人学生との交流で、パンダに対する興味が極めて低いことに驚いたそうです。
  留学中に、臥龍ジャイアントパンダ保護研究センターと成都ジャイアントパンダ繁殖育成研究基地(以下、成都パンダ基地)を訪問。念願のパンダは「毛は硬くゴワゴワ。竹のような植物の匂いが印象的」でした。
  2006年、大学卒業後はパンダ専門家を輩出する四川農業大学「野生動物と自然保護区管理」学科へ。授業は1日4科目以上。夜や土日も授業や実験、フィールド調査などに出かける毎日でした。
  苦労したのは四川語と理系の学科。四川語は普通語の3声が4声、4声が3声に変化するので「授業はちんぷんかんぷん。そんな時、助けてくれたのがクラスメートでした。彼女たちに本当に感謝しています」

 

 

1歳半の幼年パンダにそっと近づいてリンゴをあげる阿部さん(成都パンダ基地)

 

 

成都パンダ基地へ就職

 

 成都パンダ基地での5カ月間の卒業実習を経て、大学4年生に籍を置きながら、正式な飼育員に。朝は8時30分から午後5時まで、夜勤は当番制で午後5時〜翌朝8時15分が勤務時間。同基地では幼年から老年まで全部で約80頭いたパンダを日中は25人の飼育員が、夜勤は7人体制で担当しました。
  阿部さんは中国人飼育員らと1日に5〜6回の竹やリンゴ、パンダ団子などの給餌のほかに、午前と午後2回の掃除、医療補助、観察、翻訳の仕事をしました。
  「性格も、体調も、好みの竹も違います。大人のパンダは1日に50`も竹を消費します。先輩飼育員からは愛情をもって接することの大切さを学びました」
  研修から就職までの約1年半の間に60頭以上のパンダの飼育を経験しました。

 

リーリー、シンシン到着

 

 10年6月、四川農業大学を卒業するころに、中国政府が上野動物公園にパンダの貸し出しを決定。上野動物園の園長宛てに働かせてほしいと手紙を書き、9月に帰国。10月には同動物園で2頭のパンダを迎える準備に当たりました。
  中国と同じ環境づくりに努め、丸太のベッドに隙間を作って糞を落とせるように工夫したり、大好きな水浴びが気持ち良くできるようにプールの水深を浅くしました。
  翌年2月21日、リーリー(オス)とシンシン(メス)が上野動物園に到着。リーリーはおっとり、マイペース。シンシンはせっかちでおてんば。「2頭とも野生の血を受け継いだ貴重な個体」と、阿部さんは説明します。
  見どころの一例として、リーリーは肩から前肢にかけての黒い模様が八の字、シンシンはまっすぐできれいなこと。「一つ一つパーツを見るのも面白いですよ」
  飼育員の資質は?との問いに、「もちろん動物が好きなこと。観察力と洞察力も大事。チームで担当するので、コミュニケーション力も大切です。来場者に動物の保護の大切さや興味をもつ『きっかけ』づくりができる動物園が理想」と、語ります。

 

阿部さんの将来の夢は?

 

 12年の調査で野生のパンダは約1600頭と言われています。これからのパンダ保護は、それぞれの個体の質を重視し、良質なパンダを繁殖させ、やがて野生に返し、その生息数を増やすことが求められています。
  「将来は中国でパンダを野性に返す仕事に携わりたい。パンダの個体数を安定させるには、生息地を守ることが一番大切」と、目を輝かせます。
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恩賜上野動物園
  1882年3月20日に開園し、日本で最も古い動物園。ジャイアントパンダ、スマトラトラ、ニシローランドゴリラなどの希少動物をはじめ約450種の動物を見ることができます。
●住所=東京都台東区上野公園9−83
  TEL03(3828)5171 FAX03(3821)2493
  開園時間=9:30〜17:00(入園および入場券の販売は16時まで)
●定休日=毎週月曜日(月曜日が国民の祝日や振替休日、都民の日の場合はその翌日が休園日)無料開園日=開園記念日(3月20日)/みどりの日(5月4日)/都民の日(10月1日)
  ※こどもの日(5月5日)は、中学生は無料。
  ※老人週間(9月15日〜9月21日)期間中の開園日は、60歳以上の方と、その付添者(1名)は無料。
●入園料=一般600円、中学生200円、65歳以上300円(小学生以下無料、都内在住・在学の中学生無料)
●交通=JR上野駅 公園口から徒歩5分、京成電鉄上野駅から徒歩10分
  ホームページはhttp://www.tokyo−zoo.net/zoo/ueno/
  ジャイアントパンダの情報サイトhttp://www.ueno−panda.jp/


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