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日中友好新聞

2010年08月05日号1面
河南省で出土の名品約150件が勢ぞろい
東京国立博物館で「誕生!中国文明」展

 東京・上野の東京国立博物館・平成館では7月6日から9月5日までの日程で特別展「誕生!中国文明」を開催。河南省で出土した数々の名品に焦点を当て、中国文明の誕生と発展を紹介しています。同博物館の学芸研究部(列品管理課長)谷豊信さんに展覧会の見どころや意義などについてのお話を聞きました。


写真

九鼎八キ(河南省文物考古研究所蔵)


8割が日本初公開

 

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谷豊信さん

 河南省は、黄河の中流域に位置する中国王朝発祥の地です。近年、中国最初の王朝とする説が有力となっている夏。以後、商(殷)、東周、後漢、魏(三国時代)、西晋、北魏、北宋などの王朝が河南省に都を置きました。夏以来3000年余りの期間です。
 「王朝の誕生」「技の誕生」「美の誕生」という三つのテーマで構成され、青銅器、金銀器、漆器、陶磁器、壁画、彫刻、文字資料など約150件を展示。約8割が日本初公開です。広い展示室で、来場者は熱心に作品に見入っていました。
 「中国全国ではなく河南省一つの地域だけの出土品を扱っている点、それでいて河南省が長く中国の中心地であったことから、中国文明全体の展示になっている点です」。谷さんは展示の特徴をこう語ります。
 「誕生!中国文明」の「誕生」とは「一つの王朝をさすのではなく、河南省で次々に新しい創造があり、それが中国文明の伝統になっていった。日々発展していく過程のなかでさまざまな誕生があったという意味です」
 展示で工夫した点は「一定の時代ごとに分けるのではなく、同じような作品を時代は違うが並べてみた点です。思い切った配置なのでぜひ見てほしいです」と語りました。

 

三つのテーマ、古代文化の粋が

 

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御者と馬(洛陽博物館蔵)

 第一部「王朝の誕生」の最初にあるのが、「動物紋飾板」です。夏の時代の作品。国立博物館で「夏」王朝を取り上げたのは初めてで、青銅製の板にトルコ石の小片が嵌め込まれ、動物の姿を真上から見たさまを表しています。
 動物の目の部分も丸いトルコ石が嵌め込まれ、見る角度によっては照明の影響か透明に光ってみえます。墓から形と大きさがほぼ同じ飾板が3点発見され、そのうちの1点。
 その場に一瞬緊張感が漂うのがダイナミックに展示されている「九鼎」です。もともと鼎は犠牲(いけにえ)の肉を煮る調理用の器でしたが、商時代には料理を盛るための鼎もあったとされます。身分によって九鼎、七鼎、五鼎と、使用できる鼎の数が異なり、中でも九鼎は王だけの特別な数とされていました。胴部全体は龍が絡みあう紋様で飾られ、力強さを感じます。
 第二部「技の誕生」で、来場者の目を奪っていたのは宋の時代の「金製アクセサリー」です。金の針金で枠をかたどった後、その内側に極細の針金を複雑にからみ合わせて紋様をつくり、さらに枠には金の粒を一つ一つ溶接。丹念で繊細なつくりから、当時の高度な技術、また上流階級の豪華できらびやかな生活が垣間見えます。
 「七層楼閣」はその名のとおり7階建てで、空中の通路で付属の建物とつながっています。河南省の後漢時代の墓から大型楼閣の模型が数多く出土。6階の窓辺には主人らしき人物の姿がのぞいていて、ユーモラスな雰囲気さえ感じます。
   第三部「美の誕生」では、人馬ともにいまにも動き出しそうな作品が「御者と馬」。馬は前脚をあげ、御者の引く手に強く抵抗し、御者は伸ばした手の先まで力が入り「おい、行くぞ」と言っているようです。衣服や馬の飾りには朱色が残っています。
 怪獣が舌を出し、頭上には6匹の小さな龍がいる作品が「神獣」。表面全体には龍、鳳凰、虎などの紋様がトルコ石の小片を嵌め込む象嵌(ぞうがん)技法で飾られています。独特の怪異な形ながら、神秘さがあり鬼神を好んだとされる楚の風俗を感じさせます。

 

異文化知り合う大切さ

 

 谷さんは「河南省文物局局長陳愛蘭さんから東京で河南省の文物展を開きたいという要望があり、3年ほど前から、何度も河南省に調査に行き、協議の末、開催に至りました」と話します。
 中国との文化交流について「日本と中国は似ているところもあるが、違うところも多い。古い中国の生の作品をたくさん見ていただき、さまざまな違いがあることを知っていただきたい。文化を通して日本と中国、お互いが身近な存在になれれば良いと思います」と締めくくりました。(平澤)

 

☆開催について☆
  ▽とき=7月6日(火)〜9月5日(日)午前9時30分〜午後5時(金曜日は午後8時、土・日は午後6時まで)、休館月曜日、8月16日(月)は開館
▽ところ=東京国立博物館平成館(JR線上野駅公園口徒歩10分)
▽料金=1500円(団体1200円)、大学生1200円(同900円)、高校生900円(同600円)
▽巡回=九州国立中央博物館 10月5日(火)〜11月28日(日)、奈良国立博物館 11年4月5日(火)〜5月29日(日)
▽問い合わせ=03−5777−8600(ハローダイヤル)

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