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日中友好新聞

2010年4月15日号1面
平和の心たずさえて南京で日本絵画展
「南京ジャパンウィーク」に日中画家の懇談会も

 2月28日から3月5日まで中国・南京市で開催された「2010南京ジャパンウィーク」(在上海日本国総領事館、南京市人民対外友好協会主催)は、南京虐殺事件を背景に南京市民に根強くある反日感情を改善し、日中両国民の相互理解をすすめることを目的としたものです。
 開催は今年で3回目。「日中友好柔道館」完成式と山下泰裕さんによる柔道教室、シンガーソングライター福井舞さんのコンサートをはじめとした多彩な企画で、南京美術館で初めての「平和の心をたずさえて〜2010年日本の絵画展」(同展実行委員会と南京市人民対外友好協会共催)の開催もその一環でした。
 絵画展に出品したのは、日本のプロ画家18人、油絵・日本画・木版画・水彩画など85点。3月1日から10日間の会期に、中国の美術関係者2500人が鑑賞。日中画家懇談会も開かれました。
 同展実行委員会代表の水沢武夫さん(みずさわ画廊・東京)にその反響や感想を聞きました。

 

なぜ「南京で」開催か

 

写真1
展示会場の一角

 「なぜ南京市で?」。絵画展を開催することになった理由を水沢さんはこう語ります。
 「高校の授業で『千里鶯啼いて緑紅に映ず』というと杜牧の詩『江南の春』の美しい自然とゆかしい文化が薫る江南のイメージが脳裏に刻まれていました。一昨年の秋、その江南の地、南京を訪問し、南京大虐殺記念館を訪れ大きな衝撃を受けました。長江のほとりは『鳥飛んで下らず、獣挺りて群を亡う』地となり、鬼たちの啼く声が聞こえる所となりました。日本人として、謝罪とその払拭のために何かしなければ…という思いが私を駆り立てました」
 「平和の心をたずさえて〜2010年日本の絵画展」はこうして開かれました。受け入れ団体は南京市人民対外友好協会(孫文学副会長)。300万部をもつ地元紙「揚子晩報」や江蘇省テレビで報道されました。

 

「人間的連帯・結びつき」に共感

 

写真2

絵画展を訪れた美術を学ぶ中国の学生たち
に囲まれた水沢武夫さん(中央の帽子姿)

 鑑賞した美術専門家や美術家をめざす学生などから「作者と観客の心と心が触れ合う作品」「作者の市民感覚がよく出ている」「作品に触れてホッとした気持ちになった」など、高い評価を受けました。
 水沢さんは「いま多くの展示会を観ますが、人から人へ呼びかける観点のない作品が多い。日本は未曾有の文化的荒廃と経済中心主義で人間的感性が失われている。中国も必ずしも安心・安全・安定とはいえない状況がある。そうした環境のなかで開かれた展示会の作品が、人間的連帯や結びつきの大切さを伝えてくれたのではないでしょうか」と話します。
 感想のなかには「作品から日本人が直面している苦しさも感じ取れた」というものもありました。

 

日本の近代美術の影響大きく

 

写真3

水沢武夫さん

 画家の懇談会は親近感に満ちていました。協力してくれた中国人画家のなかには、日本に留学し絵を学んだ徐悲鴻(1894〜1953・中華全国美術工作者協会主席を歴任)の孫、傳抱石(1904〜1965・江蘇省国画院院長を歴任)の子どもなど、著名な関係者もいました。
 中国は、政治・文学・思想など留学生が日本から学び取ったものが多いといいますが、絵画も同様です。明治期の近代美術を学んだ学生が帰国し、美術界の要職に就き発展させたのです。「近代中国美術は日本とともにあり、お互い影響しあって進んできた」といいます。

 

中国絵画の独自性、「山水画」に源流

 

 同時に、長い伝統をもつ中国絵画。その源流は、「山水画」にあるといいます。人生観・宇宙観・希望など理想の世界、平和の世界、桃源郷を「山水画」に求めているのではないか。
 中国自身も「文革」期の混乱があったり、その後は急速な「現代化」の波が押し寄せたりで落ち着きがない。
 こうした背景のなかで、「中国の画家は現代をほとんど描かない、古典に理想を求めている、そうした印象を強く受けた」といいます。
 近い将来、日本で「中国絵画展を開ければ…。日中間の友好促進には、文化交流がますます大きな意味をもってくる」と締めくくりました。(O)

 

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