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日中友好新聞

2010年1月25日号1面
環境協力は一緒に考える時代に
中国は環境問題のデパート
地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長 小柳秀明さんに聞く

 急速な経済発展とともに深刻化する中国の環境問題。私たちはその現状と未来をどう考えるべきか−。1997年に国際協力機構(JICA)の専門家として中国に派遣されて以来、長年にわたり日中間の環境協力に携わってきた小柳秀明さん(地球環境戦略研究機関IGES北京事務所長)にお話を聞きました。(編集部)

 

実践的、革新的な政策研究

写真1

取材に応える小柳秀明さん
IGES東京事務所にて

 

 「環境問題のデパート」。大気汚染、水質汚染、土壌汚染、日本のマスコミでも多く取り上げられる「食の安全」問題、砂漠化や地球温暖化など、広大な地域にさまざまな問題が同時に発生している中国の現状を、小柳さんはこう表現します。
 アジア太平洋地域の環境問題について、実践的、革新的な政策研究を行うIGES。小柳さんは06年の北京事務所の立ち上げ以来、大気・水環境などの管理や、温室効果ガス削減にかかわるさまざまな事業に携わってきました。

 

「水」の改善を中国の政策に

 

 小柳さんが近年力を入れているのは、中国の国民にとって一番深刻な「水」の問題。
 「水問題は重要のなかの重要。21世紀に入り、都市地域と工場の排水については本格的な対策がなされてきましたが、汚染全体の3分の1以上を占めるといわれる農村地域はほとんど手つかず。特に水源地の上流部の環境を改善しなければ、安全な飲料水を確保できません」

写真2

重慶市忠県の生活排水処理施設
中国独自の人工湿地方式を取り入れている

 関係機関への粘り強い働きかけが実り、08年から重慶市、江蘇省、新疆ウイグル自治区、雲南省の各地で、分散型排水処理施設を相次いで建設。収入の少ない農村地域の事情をふまえ、自然の浄化力を生かした人工湿地などを採用し、「人手やコストがかからず、長く使える施設」を目指しました。これらは中国全土に普及させるためのモデルとして、重要な役割を担っています。
 「水質改善の結果もきちんと出ています。これらの施設で見本を示し、2011年以降の第12次5カ年計画に取り入れてもらうことを考えているのです」と、小柳さんは意気込みを語ります。
 こうした取り組みの成果が認められ、IGESは09年6月に日中両国の環境大臣の覚書により、日中環境協力のプラットフォームに指定され、今後ますます重要な役割を担うことになりました。
 しかし、今後の日中の環境協力は「本当の意味での『勝負』」と小柳さんは強調します。

 

求められる「人材」の養成

 

 「この十数年、中国の環境問題に対する意識や能力は飛躍的に向上しました。実は、本当にいま必要なのは、技術を教えることよりも、環境に関する制度や仕組みを、中国の国情に合わせて改善すること。相手側と一緒に成長しながら、中国の現状に立って、これからどうすべきかを一緒に考えられる人材が、日本では十分に養成されていないのです」
 小柳さん自身も、中国の環境問題への理解を広げるため、精力的に執筆、講演などの活動を続けています。
 「日本国内の論理は『日本にも影響があるから協力しなければ』ですが、現地の人びとは被害から逃げられない。私たちよりもっと困っている人がたくさんいるのだという視点が大切です」
 小柳さんは「日本では情報が少なく、マスコミの報道にも偏りがある。自分が見聞きして理解していることを、できるだけ公平に伝えるよう努力して、中国の現状を理解したうえで考えてもらいたい」と考えています。「私も長年協力をしていますから、これはもうライフワークの一つですね」と笑顔で語りました。(Z)

 

 参考
 ● IGESホームページ
 ● 日経エコノミー連載「環境問題のデパート・中国の素顔」

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