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日中友好新聞

2008年4月25日号1面
日中友好に新たな視点
八路軍の従軍写真家
沙飛の作品、日本初公開
東京で開幕、全国巡回へ

 

写真
沙飛写真展の開幕式(左から3人目が王雁さん、4人目が王少軍さん)

 日中平和友好条約締結30周年を記念して抗日戦争期に中国の八路軍に従軍した沙飛(さひ)の写真展が4月12日から16日まで東京・品川区のO(オー)美術館で開幕しました。写真展は、4月下旬から宮崎県・都城市、熊本市、鹿児島市などで開催され、引き続き全国巡回の予定です。

 

 沙飛は日中両国が全面戦争に入った1937年から八路軍に従軍し、1000枚を超える写真を撮影。それらは画報などの形で中国の民衆に浸透し、抗日戦争を支えました。また100人以上のカメラマンを育成するなど、中国の写真史に大きな足跡を残しました。
 しかし、抗日戦争勝利後の1949年、病気で入院中の沙飛は人民解放軍に協力した日本人の津沢勝医師を射殺、その罪により処刑されてしまいます。
 のちに沙飛が当時の中国の医学水準で理解できなかった精神病にかかっていたことが明らかになり、1986年に名誉を回復しました。一方、日本中国友好協会都城支部の努力で07年6月に中国側から津沢医師に「名誉証書」が授与されました。
 05年の都城支部と沙飛の遺児・王雁さんとの出会いから生まれた沙飛写真展の企画は、沙飛の写真作品(王雁さん提供)と、津沢医師の紹介を合わせて、今年4月から日本各地で開催されることになりました。

遺族も出席し感動の開幕式

 日本での沙飛写真展の幕開けとなる東京展は、「悲劇の従軍写真家・沙飛の日中戦争〜日本初公開の秘蔵作品群〜」(主催=沙飛写真展実行委員会)がタイトル。
 開幕式には中国から来日した王雁さん(沙飛次女)と王少軍さん(三女)、実行委員長の姫田光義さん(中央大学名誉教授)、日中友好協会会長の長尾光之さん、東京都連合会会長代理の石子順さん、都城支部長の来住新平さん、品川支部長の秋田穫雄さん、後援団体の代表として中国大使館の孫美嬌参事官、杜暁曦友好交流部アタッシェ、朝日新聞社の山根祐作記者、日中文化交流協会の小阪雄二事務局長補佐らが出席。
 100人を超す来場者を前に、姫田光義さんは、「大きな誇りと自信をもって、日本初公開となる沙飛写真展の開幕を宣言します」とあいさつ。
 王雁さんは、「日本で父・沙飛の写真展を開催することは、私たち家族の長年の願望でした。父の写真作品と津沢勝医師の写真資料が一緒に展示されたことに、非常に感動しています。2人の御霊(みたま)が慰められると信じます。日中両国民の間に友情が続くことを祈っています」と涙ながらに語りました。

写真や資料100点を展示

 写真展は、日中戦争を戦う中国の人びとの生き生きとした姿、若い芸術家たちに語りかける文豪・魯迅の晩年の姿、中国の抗日根拠地で医療に携わるカナダ人医師べチューン、八路軍兵士が日本軍捕虜と交歓する場面、八路軍兵士に救出された日本人少女の栫(かこい)美穂子さんと聶栄臻将軍との有名なツーショットや、津沢勝医師の資料、写真など約100点、沙飛が使ったものと同型のカメラ、当時の絵はがきなどが展示されました。
 会場につめかけた参観者は「今までの戦争写真にはない初めての視点。捕虜の日本軍人が人間的に写っている。敵の兵士に対して優遇政策をとるなんて考えられない。復讐心がないのは不思議」「戦争の写真だけど群衆の表情がすごく明るい」「八路軍が生活しながら戦っていたなんて初めて知りました」などの感想を寄せました。
 中国大使館の孫美嬌参事官は「沙飛は中国で有名な写真家。この写真展は日中両国の歴史を改めて目の前に浮かびあがらせました。両国関係の友好のためにも二度とこのような悲しい歴史を起さないよう努力することが大切です」と語りました。

トークイベントで劇的再会も

 12日午後には姫田光義さんがコーディネーターとなり、王雁さん、来住新平都城支部長によるギャラリートーク「沙飛の日中戦争〜未来の友好を見つめて〜」を開催。
 会場いっぱいの100人が耳を傾けるなか、来住さんは沙飛写真展開催に至る経緯を説明し、「沙飛の残した功績と写真は次の世代に語り伝える必要がある」と強調しました。
 王雁さんは、「日本で沙飛のことを話せてとても嬉しい」と述べ、父親の数奇な生涯を紹介。
 ギャラリートークの終盤、日本人としていち早く90年代に日本で沙飛を紹介した三山陵さん(日中芸術研究会事務局長)が偶然会場に居合わせ、王雁さんとの劇的な再会が実現。
 三山さんは「90年に中国の新聞史の書物を読んで初めて沙飛の存在を知り、中国まで取材に行きました。砂飛写真展が実現し、王雁さんたちに会えてとても嬉しい」と語りました。
 13日は報道写真家の中村梧郎さんが「沙飛従軍取材の苦難をしのぶ」と題し、沙飛の写真撮影を解説。14日には実行委員長の姫田光義さんが「沙飛が駆け抜けた38年」と題して沙飛の生きた抗日戦争の歴史と、写真が語る歴史を解説しました。
 写真展は5日間で1730人が来場し、好評のうちに閉幕しました。

 

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