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日中友好新聞

2007年11月15日号1面

民生改善で調和社会めざす
中国共産党第17回大会
菊池敏也(中国問題研究者)

 

写真上海万博会場予定地から立ち退いた住民のために建設した住宅団地(筆者提供)

 中国共産党第17回大会が10月15日から21日まで、北京で開かれました。大会では、胡錦濤総書記の大会報告を採択し、新指導部を選出。また、胡錦濤氏らが提唱してきた「科学的発展観」などの内容が党章(綱領・規約)に盛り込まれました。

経済発展下で解決迫られる課題も

 今年、中国の国内総生産(GDP)は3兆ドル(約350兆円)に達する見通しで、世界第3位のドイツに並ぶか、追いこす可能性もあります。貿易額も2兆ドル(約230兆円)を突破する見込み。
 国際政治でも、中国が議長国を務める6カ国協議で北朝鮮の核問題をめぐって進展がみられ、上海協力機構(SCO)では中国、ロシア、中央アジア諸国の協力も進んでいます。 
 経済発展や国際的な影響力の拡大が著しい中国ですが、経済成長にともなう環境問題や所得格差の拡大、幹部の汚職など、解決を迫られる課題も少なくありません。

国民の要求や関心に応える姿勢

 こうした状況の下で開かれた大会は、国際的な注目を集め、55カ国・地域(香港や台湾を含む)から1100人を超える記者が取材しました。胡総書記報告は、今後5年間の中国共産党の基本方針を示したものですが、そこには国民の切実な要求や関心に応えようとする姿勢がありました。
 報告は12の章で構成され、10章からなる前大会の報告より2章増えました。第3章が「科学的発展観」にあてられ、第8章は「民生の改善を重点とする社会建設の推進を加速化する」との表題が付けられました。
 民生を改善し、公平・正義を促進し、調和社会の建設を推進するという方針です。ここで示された教育の発展、雇用拡大、国民の収入増、社会保障システムづくり、医療制度の確立などの課題は、いずれも中国国民の切実な要求です。

社会主義の民主政治を強調

 中国の経済・社会が発展し、人びとの利害関係も複雑化するなかで、政治面での民主主義のあり方も問われるようになっています。胡報告では「社会主義の民主政治」を発展させることを強調し、「人権を尊重し、保障する」とも述べています。
 民主主義をどう具体化するのかという点では、都市や農村のコミュニティーを対象とした基層での民主主義や、党内の民主的運営などに重点が置かれました。国民が主権者としての権利を行使する制度づくりの点では、今後の積極的な対応が求められています。

新指導部に50代前半組を抜てき

 大会翌日(10月22日)の一中総では、新指導部が選出されました。胡錦濤氏が総書記に再選され、前大会と同数の9人の政治局常務委員を選びました。曽慶紅、呉官正、羅幹の3氏が退き(黄菊氏は任期中に死去)、胡氏と呉邦国、温家宝、賈慶林、李長春の5氏が再選されました。
 新たに選出されたのは習近平、李克強、賀国強、周永康の4氏。50代前半の習、李の両氏は中央委員から政治局委員を飛び越えての抜てきです。

2期目の胡錦濤政権に注目

 来年8月の北京五輪、建国60周年(09年)、上海万博(10年)、中国共産党創立90周年(11年)など、中国は毎年、節目の年を迎えます。2期目に入った胡錦濤政権が、今大会で決められた諸課題を遂行し、ゆとり社会の実現にむけ、中国が着実な発展をとげることができるか、今後も注目を集めることでしょう。
 (菊池さんは本紙第4面の「中国的生活」を定期的に執筆していましたが、最近北京から帰国しました)

 

 科学的発展観とは=経済成長一本やりではなく、貧富の格差、都市・農村の格差是正、省エネ、環境保護などにも力を入れて社会の各分野に配慮し、全体としてバランスのとれた持続可能な発展をめざす立場。その核心は「人をもって本となす(人間本位主義)」にあり、「社会主義調和(原文=和諧)社会」建設のための基本的指針とされています。(編集部)

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