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日中友好新聞

2007年4月25日号1面

今こそ歴史から「医の倫理」を
医師、医療関係者ら、日本医学会総会で「戦争と医学」展とシンポジウム

 戦時中、中国で人体実験による細菌兵器開発を行なった日本軍「731部隊」をはじめ、侵略戦争に関わった医学者の責任を明らかにする「戦争と医学」展が3月31日から4月8日まで大阪市内で開催されました。同展は、第27回日本医学会総会(4月6〜8日、大阪)に出展され、8日には国際シンポジウムも開かれました。戦争責任に関する問題が日本医学会の総会と合わせて取り上げられるのは初めてです。

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シンポジウム「戦争と医の倫理」会場(4月8日、大阪)

 これらの行事は、全国各地の開業医、医学者、研究者、医療団体関係者を中心とした実行委員会が企画したもの。
 「戦争と医学」展は企画展会場の一角で、戦争中の医学者、医師らによる加害事実、日本医学界の戦後の問題などを紹介しました。
 総会と別会場で開かれた国際シンポジウム「戦争と医の倫理」には250人が参加。中国・「731部隊罪証陳列館」の王鵬館長、米国・ハーバード大学公衆衛生学部のダニエル・ウィクラー教授、「15年戦争と日本の医学医療研究会」の莇(あざみ)昭三名誉幹事長の3氏が発言し、731部隊をはじめとする戦争犯罪や、それに関わった日本の医学界と軍部の実態、多くの医師を非人道的な実験に向わせた社会構造や、戦後処理の問題点などを明らかにしました。また、元731部隊員の男性(88歳)も出席し、自らの体験を語りました。

 問われてこなかった「犯罪」

 「この20年来、731部隊などの実態は研究者や市民らによって紹介されてきましたが、当の医師、医学者自身による、広く国民に開かれた場での検証と反省がなかった。世界医師会に加盟時(1951年)の日本医師会の声明でも、わずか数行の反省を述べているだけで、抽象的なものです」。同展実行委員会の顧問・監修をつとめた住江憲勇(すみえけんゆう)さん(全国保険医団体連合会会長)はこう話します。
 実行委員会が101の医学会を対象に実施したアンケート調査(24学会が回答)では、日本医学会の戦争加担に関する討議や、学会内での731部隊関係者の調査が全く行われていないことが明らかになりました。
 「今回は企画出展という形だが、シンポや展示の成功で、日本医学会も無視できない動きになっている。4年後の東京での総会では、公式行事として行うよう求めていきます」
 多くの来場者が展示に見入る様子に、住江さんは確かな手ごたえを感じ、意気込みを語ります。

 罪を繰り返させてはならない

 戦後60年以上経った現在、なぜこのような動きが医学者たちの中から起こっているのか――?
 「あの軍国主義のなかで、医師たちは倫理を奪われ、侵略戦争に加担させられていった。薬害など一連の問題が起こり、『戦争放棄』や『基本的人権』を定めた日本国憲法を変えようとする政策が進められている今こそ、歴史の事実から教訓と反省を引き出し、科学者としての倫理を導かなければ。『次の世代の人びとに、同じ罪を繰り返させてはいけない』というのが実行委員に共通する思いです」
 こう話す住江さん自身も元開業医。3年前からハルビン・731部隊罪証陳列館との交流を続けています。「良識をもって行動する日本人もいるということを、中国の人びとに伝えたい」と語ります。 
 今後も、第22回保団連医療研究集会(10月6日〜7日、福岡)でシンポジウム「医師の戦争責任を考える」を予定するなど、幅広い取り組みが始まっています。
 「展示資料は貸し出しにも応じています。とにかく、全国の多くの人に見てもらって、事実を知ってほしい」と、住江さんは強調しました。
(Z)



「731部隊」とその犯罪行為

 1930年代、陸軍軍医・石井四郎らを中心として、黒龍江省ハルビン郊外の平房地区に建設され、のちに「満州731部隊」と呼ばれた。細菌兵器の開発と細菌戦を目的に、生体解剖、人体実験などを1945年の敗戦まで続けた。
 元部隊員の証言などから、政治犯、捕虜だけでなく罪も無い中国の民衆も実験台とされ、細菌注射、麻酔なしでの切開、解剖など、非人道的な実験が日常的に行われていたことが明らかにされている。
 また、731部隊には軍部だけでなく、日本各地の大学医学部などが組織的、積極的に関与。部隊の幹部は敗戦後に実験データを米国側に引き渡して罪を逃れ、その多くが各地の大学医学部の教職につき、戦後の各学会で影響力を強めていった。



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