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日中友好新聞

2007年4月15日号1面

「観る」から「参加」へ、発展なるか
中国の国民スポーツを考える

 2008年の北京オリンピック開催が迫り、中国選手の活躍や中国スポーツの発展が期待を集めていますが、中国の一般市民はどの程度スポーツに親しんでいるのでしょうか? 中国の国民スポーツについて考えます。(編集部)

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北京市内のオリンピック体育センターの「遊泳館」

  身体素質の向上めざす

 中国のスポーツ人口(週3回以上、30分以上の運動をしている7〜70歳の人の割合)は、2000年の調査で33・9パーセント(02年末、国家体育総局の発表)。当局は北京オリンピックを契機とし、2010年までに40%まで引き上げたい考えです。
 00年、05年の2回にわたる身体機能の全国調査、中国初の国民体操となる「大衆広播体操」の制定(05年2月)に続き、06年3月には大衆スポーツの普及や、設備の建設拡大、活動拠点やクラブ組織の設置、健康・スポーツ市場の促進などを掲げた「全民健身計画」を発表。
 こうした一連の施策と方針には、国民の生活改善とあわせて、国民の身体的素質も高めようという意気込みが表れています。

 「体力テスト」と「体育嫌い」

 中国の学校体育の現状に目を向けると、日本と大きく異なるのは「体力テスト」の存在です。進学や就職のさい、体力テストの結果や体育科目の成績が影響するシステムであるため、学生たちは体育の授業にも真剣に取り組むことが求められています。
 上海の大学を卒業後05年に来日し、一橋大学経済学研究科博士課程で学ぶ銭静怡さん(女性)は、「毎年、全国統一の体力テストを受けました。50メートル走、長距離走、幅跳び、砲丸投げなど、1種目でも不合格だと卒業証書がもらえず、追試で合格して初めて卒業となります」と、中国での大学生活を振り返ります。
 1999年から2年間、上海・華東師範大学で語学指導にあたり、中国のスポーツ関係者と親交のある川口智久さん(一橋大学名誉教授)は、「競技をパスやシュートなどに分解して、機械的な技能練習を繰り返している。スポーツの楽しさを教える要素に欠け、さらに『体力テスト』も加わり、多くの学生が『体育嫌い』になっているようです」と、体育教育の現場についての印象を話します。
 「体育とは本来、スポーツという人類の文化を子どもたちに伝えていくことが目的で、体力や人間関係などはその実践を通じて身につくものと私は考えます。その後、都市向けの学習指導要領の改訂が行われ、体力づくりのためだけの体育ではなく、『スポーツ文化を生活に取り入れる』という目標が示されました。中国の体育における新しい芽に期待しています」と川口さんは語ります。

 庶民と「施設」の間の距離は

 また、スポーツ施設の国民への開放も課題の一つです。
 「日本の市民は地域の体育館などの施設を安い料金で利用できます。私自身はバトミントンが好きなのですが、中国では会場の使用料が高くて、多くても月1回程度しか行きませんでした。体育館が増えていても、一般には若い世代のホワイトカラー層向けで、高齢者はやはり太極拳やダンスを楽しんでいるという状況です」と、銭静怡さんは語ります。
 その実感からは、市民と地域の施設の間に依然として距離があることが想像されます。
 その一方で、サッカー、バスケットボール、バレーボール、卓球などのテレビ放送は人気を集め、06年のサッカーのワールドカップでは、世界の強豪チームの活躍に多くの若者が熱狂したように、「観る」スポーツは国民の間に広がり定着しています。
 「『体育』が嫌いな若い世代も、スポーツは大好きなのです。やり方さえうまくすれば、きっとスポーツ文化が国民に大きく広がるのでは」と川口さん。
 「参加する」スポーツが国民にとってどこまで身近なものになるか――。中国社会の発展の一側面として、注目したいところです。
(Z)


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